自信

 約2年前に来日した6年生の女の子。もともと寡黙な性格のようですが、担任の先生によると、いつも表情が硬く、声を聞いたこともないとのこと。1対1の日本語支援の際もずっと、例えば、「校外学習どうだった?」「(沈黙)」「楽しかった?」「(首を縦に振る)」「どこが楽しかった?」「(沈黙)」「〇〇?」「(首を横に振る)」「△△?」「(首を縦に振る)」という調子。こちらが答えの選択肢を出すのを待って、首だけ振るスタイルで”会話”をしてきました。

 無理に話させようとしない、というのは私たちが心がけている鉄則の1つなのですが、ある日思い切って、私の質問に何も答えない彼女に対して「私、待ってるよ」と伝え、こちらもずっと黙っていました。数回「考え中?」と聞きながら約10分が経過したころ、単語でぼそりと初めて答えを発してくれました。私がその内容の面白さに「え~、そうなの!?」と笑うと、彼女の目がキラッと輝きました。その日以降も、答えが出てくるまでに待つことは続いていますが、この1か月の間にずいぶん早く、しかも、文で、自分のことを嬉しそうに話してくれるようになりました。

 担任の先生によると、ちょうどその頃から教室でも笑顔が見られるようになり、学習にも積極的になったとのこと。これからも、あの日の10分のような、子どもの自信を呼び覚ませるような支援をしていきたいと思います。